Lenivis LLCという会社を設立しました。現時点で売上ゼロです。

https://lenivis.com

会社設立の手続きはAIのおかげで想像以上に簡単でした。

Google Workspaceの契約、ドメインの取得、会社用メールアドレスの設定、ワシントン州へのLLC設立申請、EIN(納税者番号)の取得、州・シアトル市への事業登録、法人口座の開設、Stripeの設定など。

事業用の電話番号の用意など、細かい作業はいろいろありましたが、基本的にはAIエージェントくんの指示に従って、必要な情報をポチポチ入力していただけです。2週間ほどでほぼ完了しました。

実際にかかった費用は以下の通り。

項目費用
WA州 LLC設立$200
WA州 事業登録・屋号登録$55
Seattle市 事業ライセンス$41.41
私書箱の公証費用$25
合計$321.41

このほかにドメインやGoogle Workspaceなどの費用がかかります。

Lenivisの帳簿。

事業としては、主に次のふたつを進めていく予定です。

  1. koe という音声入力SaaSの開発
  2. 企業向けAI導入・ソリューション開発

1. koeという音声入力アプリ

koe — Your voice. Where you type.
https://saykoe.com/

もともとは完全に個人の趣味で始めたプロジェクトです。

僕は普段から音声入力を多用していて、AIとのやり取りも音声がデフォルトになりつつあります。そこで、どんなデバイスでも高速で快適に使える、自分にとって理想的な音声入力ツールをつくりたくなりました。

目指しているのは、Wispr Flow以上のパフォーマンスと使い勝手を、可能な限り低価格で提供することです。

僕が好きなMaccyやMagnetのようなmacOSアプリに、できるだけ近づけたいと思っています。

Maccyクリップボードの履歴を、すぐ手元に。
Magnetウィンドウを並べて、作業を快適に。

僕は、優れたツールというのは存在感がないものだと考えています。操作を意識せず、自然に手に馴染んで、やりたいことだけが達成される。そういうコンセプトで開発しています。

話した内容が、そのままTextEditに入力されます。

機能自体は数日で完成しましたが、細かいUXの調整にはその何倍もの時間がかかっています。

最低限動くものをつくるハードルはAIによって劇的に下がりましたが、プロダクトの使い心地をどこまで磨き込むかという部分は、まだまだ人間の感性が重要だと感じています。

koeは近日中に一般公開する予定なので、ぜひ使っていただければと思います。

koeの開発裏話

凝り性の僕は、オンボーディングが気に食わない、UIが気に食わない、操作が遅い、アニメーションが嫌い、フィラーがうまく消えないなど、ありとあらゆる難癖をつけて改善を繰り返しています。

レイテンシも気になり始めると止まらず、同じ音声をWispr Flowにも入力して比較するベンチマークまでつくりました。長い音声はチャンクに分けてリクエストを送ることで、体感速度がかなり速くなります。

音声の長さ一括処理分割処理
8〜15秒1.88秒1.69秒
15〜25秒2.31秒1.34秒
25〜40秒3.01秒1.91秒

SwiftUIで毎回ビルドして確認するのは遅すぎるので、HTMLでUIのモックを再現させ、納得できたものだけをネイティブでビルドする方式にしました。

本番のリリースビルドには、実測のレイテンシでWispr Flowに負けないことと、20個ほどのP0のE2Eシナリオがすべてパスすることをゲートとして設けています。

気づけばUXレビューはv17です。

v2(ボツ) 文章を整える例と、メール入力。
v5(ボツ) サインインから、権限許可・メニューバーへ。
v10(ボツ) 最初に、実際の使い道を見せる。
HTMLでモックをつくり、レビューして直す方式に落ち着きました。縦方向の中央揃えがずれたり、アニメーションがネイティブの挙動と違ったりすることはありますが、試行錯誤のサイクルを速く回せます。
v2(ボツ)→ v5(ボツ)→ v10(ボツ)。
AIエージェントによるVM上のE2Eテスト。こうしたテストを20個ほど用意し、リリースビルドのたびにローカルで走らせています。E2Eも、いまは動画を残して動きを確認するやり方が主流になってきたと感じます。
初回登録から権限の設定、音声入力の練習、セットアップ完了まで。認証にはテスト用フックを使っています。

なんでもそうですが、ある程度のものをつくるのは簡単でも、そこから完璧を目指すと途方もない時間がかかります。

以前リリックビデオをつくったときも、HDRの書き出しや文字の綺麗さ、アニメーション、エンコードなどの細かい調整に最も時間がかかりました。

最後の1ミリが一番時間がかかるんですよね。

深夜3時、30歳 — YouTube · 制作について

最近では、Mitchell Hashimotoが開発しているSuperlogicalのRexのデモにも非常に共感しました。

Rexのテーマ移行デモ。出典:Alasdair Monk(@almonk)の投稿。

こういう細部へのこだわりは、エンジニアリングのなかでも特に楽しい部分だと思っています。

AIエージェントが最低限動くソフトウェアをつくれるようになった一方、何が使いやすくて、何が気持ちいいと感じるかという部分には、まだまだ人間がこだわる余地があると思います。

2. 企業向けAI導入・ソリューション開発

もうひとつは、企業向けのAI導入事業です。

最近はCrestaやSierraのようなAIエージェント企業が存在感を増していますが、僕は特に企業内部のAI活用には、まだまだ大きな需要があると考えています。

僕自身、普段のエンジニアリング業務の多くにAIを活用していて、今の仕事でも非常に高い生産性を実現できているという自負があります。

一方、企業へのAI導入には必ずしも中間のプラットフォームが必要ではないとも考えています。Claude Agent SDKやOpenAIのSDKを直接使えば、多くの業務課題に対応するソリューションを構築できるはずです。

やりたいことはシンプルで、顧客の業務課題をヒアリングし、AIを使ったソリューションを設計・実装し、そのまま顧客に提供することです。

顧客企業業務課題・既存システム
Lenivis設計・開発・導入Claude / OpenAIを活用
提供するソリューション業務自動化AIエージェントシステム連携

イメージとしては、AI版のクラスメソッドのようなものをつくりたいと思っています。

単にAIの使い方を教えるのではなく、顧客の業務課題を理解し、実際に動くソリューションを提供する事業です。

技術的には既存のSDKやAPIを活用しつつ、顧客ごとの業務理解やシステム連携、運用までをLenivisが担う。中間のプラットフォームに依存せず、できるだけシンプルな構成で実現したいと考えています。

こちらはまだ営業活動を始めたばかりですが、まずは小さく始めて、知見と実績を積んでいこうと思っています。

営業管理の画面。

LLMの登場で、個人でもできることが本当に増えました。

プロダクト開発も、新しい事業への挑戦も、今はとても楽しく取り組めています。本業以外の時間のほとんどを使っていますが、まだまだやりたいことが尽きません。

ということで、しばらくはこのふたつの軸で頑張っていこうと思います。

友人含め関係者各位、読んでいただきありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

Yuya